書(小倉百人一首)
ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり歌意: 宮中の古びた軒端の忍ぶ草を見るにつけても、しのんでもしのびつくせないほど慕わしいものは、昔のよき御代なのだった。作者: 順徳院(じゅんとくいん) 1197~1242 後鳥羽天皇の第三皇…
人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は歌意: 人がいとおしくも、また人が恨めしくも思われる。おもしろくないものと この世を思うところから、あれこれと もの思いをするこの私には。 作者: 後鳥羽院(ごとばいん) 1180~1239 高倉…
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける歌意: 風がそよそよと楢の葉に吹いている。このならの小川の夕暮れは秋の訪れを感じさせるが、六月祓(みなづきばらえ)の、みそぎだけが、夏であることのしるしなのだった。 作者: 従二位家隆…
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ歌意: いくら待っても来ない人を待ち続け、松帆の浦の夕なぎの頃に焼く藻塩のように、私の身もずっと恋いこがれていることだ。 作者: 権中納言定家(ごんちゅうなごんさだいえ) 1162~1241 藤…
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり歌意: 花を誘って散らす嵐の吹く庭は、雪のように花が降りくるが、実は雪ではなく、真に古りゆくものは、この我が身なのだった。 作者: 入道前太政大臣(にゅうどう さきの だいじょうだいじん)…
おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖歌意: 身のほどもわきまえず、私は辛いこの世を生きる人々におおいかけることだ。この比叡の山に住み始めたばかりの私のこの墨染めの袖を。作者: 前大僧正慈円(さきの だいそうじょう じえん) …
み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり歌意: 吉野の山の秋風が夜ふけて吹きわたり、古京である吉野の里は寒く、寒々と衣を打つ音が聞こえてくる。作者: 参議雅経(さんぎ まさつね) 1170~1221 藤原雅経。 『新古今集』の選者の一人。和…
世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも歌意: この世の中は、永遠に変わらないでほしいものだなあ。この渚を漕いでゆく漁師の、小舟に引き綱をつけて引くさまに、身にしみて心動かされることだ。作者: 鎌倉右大臣(かまくらの うだいじん…
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし歌意: 私の袖は、引き潮の時にも海中に隠れて見えない沖の石のように、人は知らないだろうが、涙に濡れて乾く間もない。作者: 二条院讃岐(にじょういんさぬき) 1141?~1217? 源三位頼政(…
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む歌意: こおろぎの鳴く、霜の降りる寒い夜、むしろの上に衣の片方の袖を敷いて、私はひとり寂しく寝るのであろうか。作者: 後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょう さきの だじょうだ…
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず歌意: 血の涙で変わってしまった私の袖をお見せしたいものです。松島の雄島の漁師の袖でさえ、波に洗われて濡れに濡れてしまいました。色は変わりませんのに。作者: 殷富門院大輔(いんぷも…
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする歌意: 我が命よ、絶えてしまうのならば絶えてしまえ。このまま生きながらえているならば、堪え忍ぶ心が弱まると困るから。作者: 式子内親王(しょくしないしんのう)?~1201 後白河天皇の…
難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき歌意: 難波の入り江の芦の刈り根の一節ではないが、ただ一夜の仮寝のために、あの澪標のように身を尽くして恋い続けなければならないのでしょうか。作者: 皇嘉門院別当(こうかもんいんの …
村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ歌意: 降り過ぎていった村雨の露もまだ乾いていない真木の葉の辺りに、霧がほの白く湧き上がってくる秋の夕暮れであるよ。作者: 寂蓮法師(じゃくれんほうし)1139?~1202 俗名 藤原定長(ふじわ…
嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな歌意: 嘆けといって月が私にもの思いをさせるのか、いやそうではない。それなのに、月のせいだとばかりに言いがかりをつけるように、流れる私の涙であるよ。作者: 西行法師(さいぎょうほうし)111…
夜もすがら もの思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり歌意: 一晩中もの思いに沈んでいるこのごろは、夜がなかなか明けきれないで、つれない人ばかりか、寝室のすき間までがつれなく思われるのであった。作者: 俊恵法師(しゅんえほうし)111…
ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しとみし世ぞ 今は恋しき歌意: この先、生きながらえるならば、つらいと感じているこの頃もまた、懐かしく思い出されることだろうか。つらいと思って過ごした昔の日々も、今では恋しく思われることだから。作者: …
世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる歌意: この世の中には、逃れる道はないものだ。一途に思いつめて入った山の奥にも、悲しげに鳴く鹿の声が聞こえる。作者: 皇太后宮大夫俊成(こうたいごう ぐうの だいぶ としなり)1114~1204 藤…
月末にアップしている百人一首。今月は94番の稽古をしています。2005年2月から始めた百人一首、月1首ですから8年4ヶ月かかります。あと6番。最後まで頑張ります!思いわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり歌意: つれない人ゆえに思い悩ん…
ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる歌意: ほととぎすが鳴いた方をながめると、そこにはただ有明の月が残っているだけである。作者: 後徳大寺左大臣(ごとくだいじの さだいじん)1139~1191 藤原実定。右大臣藤原公能の子。管弦や…
長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ歌意: 末長く変わらないという、あなたのお心もはかりがたく、お逢いして別れた今朝は、黒髪が乱れるように心が乱れて、あれこれともの思いをすることです。作者: 待賢門院堀河(たいけんもんいん…
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ歌意: 秋風によってたなびいている雲の切れ間から、もれさしてくる月の光の、なんとくっきりと澄みきっていることよ。作者: 左京大夫顕輔(さきょうのだいぶ あきすけ)1090~1155 藤原顕輔。 …
淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝覚めぬ 須磨の関守歌意: 淡路島から通ってくる千鳥の鳴く声のために、幾夜目をさましたことか、須磨の関守は。作者: 源兼昌(みなもとのかねまさ)12世紀初めの人。源俊輔の子。経歴の詳細は不明。『金葉集』の詞書…
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ歌意: 川瀬の流れが速いので、岩にせき止められる急流が、二つに分かれても又一つになるように、恋しいあの人と今は別れても、いつかはきっと逢おうと思う。作者: 崇徳院(すとくいん)1119~1…
わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波歌意: 大海原に舟を漕ぎ出して眺めわたすと、雲と見まがうばかりに沖の白波が立っていることだ。作者: 法性寺入道 前 関白太政大臣(ほっしょうじ にゅうどう さきの かんぱくだいじょうだいじ…
契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり歌意: お約束してくださいました「私を頼みにせよ」という恵みの露のようなお言葉を命とも頼んできましたが、ああ、今年の秋もむなしく過ぎていくようです。作者: 藤原基俊(ふじわらのもととし…
憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを歌意: 私がつらく思ったあの人を、なびくようにと初瀬の観音に祈りこそしたが、初瀬の山おろしよ、ひどくなれとは祈りはしなかったのに。作者: 源俊頼朝臣(みなもとの としより あそん)105…
高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ歌意: 遠くの山の峰の桜がさいたのだった。人里近い山の霞よ。どうか立たないでほしい。作者: 権中納言匡房(ごんちゅうなごん まさふさ)1041~1111 大江匡房。大江匡衡(まさひら)の曾孫。大江家…
音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ歌意: 噂に名高い高師の浜のいらずらに立つ波はかけますまい。袖が濡れると大変ですから。―――うわさに高い浮気なあなたの言葉は、心にかけますまい。あとで袖が涙で濡れるといけませんから。 作者…
夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く歌意: 夕方になると、門前の田の稲葉を、そよそよと音をさせて、芦ぶきの山荘に秋風が吹きわたってくることだ。 作者: 大納言経信(だいなごんつねのぶ)1016~1097 源経信。和歌・詩文・管弦に優…